結論から言うと、水素イオン($\ce{H+}$)は水中には存在せず、オキソニウムイオン($\ce{H3O+}$)が水中に存在します。
この2つの使い分けについてお話していきます。
酸塩基の分野ではこう考える
まずは酸塩基の定義をおさらいしましょう。(アレニウスの定義は飛ばします)
ブレンステッド・ローリーの定義
酸…H+を与える物質
塩基…H+を受け取る物質
この定義を使うと、水や塩も、酸や塩基とみることができます。例えばこんな反応。
$\ce{CH3COOH + H2O -> CH3COO- + H3O+}$ …①
ブレンステッド・ローリーの定義から、①式では酢酸($\ce{CH3COOH}$)が酸、水($\ce{H2O}$)が塩基と考えることができます。この反応は酢酸を水に溶かした時に起こるもので、酢酸の電離反応と考えて良いです。
ただ、電離を考えるときに①式をいちいち書くのも面倒なので、「$\ce{H2O}$を省略して」、「$\ce{H3O+}$を$\ce{H+}$に書き換える」ことが多いです。それが②式です。
$\ce{CH3COOH -> CH3COO- + H+}$ …②
よく見る反応式になりました。
このように$\ce{H+}$は$\ce{H3O+}$を省略して書いただけなので、水中に実際に存在するのは「$\ce{H3O+}$」ということになります。
電離平衡での考え方
電離平衡の式も同じ考え方に基づいて導出されます。まずは公式をおさらいしましょう。
平衡定数 \(K\)
$$ K=\frac{[C]^c [D]^d}{[A]^a [B]^b} $$
電離定数 \(K_a\) ※酢酸を例にします。
$$ K_a=\frac{[\ce{CH3COO-}] [\ce{H+}]}{[\ce{CH3COOH}]} $$
\(K\)と\(K_a\)は違うものなので注意!
では酢酸を例に、\(K\)の式から\(K_a\)の式を導出してみましょう。
反応式①について、\(K\)の式は次のようになります。
$$ K=\frac{[\ce{CH3COO-}] [\ce{H3O+}]}{[\ce{CH3COOH}] [\ce{H2O}]} $$
ここで、\(\ce{H2O}\)は多量に存在するので、反応①が起きても\(\ce{H2O}\)濃度は変化しないと近似できます(\([\ce{H2O}]≒一定\))。定数となった\([\ce{H2O}]\)を左辺に移項すると、
$$ K [\ce{H2O}]=\frac{[\ce{CH3COO-}] [\ce{H3O+}]}{[\ce{CH3COOH}]} $$
\(K [\ce{H2O}]\)も定数なので、\(K_a\)と書き換えると、
$$ K_a=\frac{[\ce{CH3COO-}] [\ce{H3O+}]}{[\ce{CH3COOH}]} $$
最後に、\([\ce{H3O+}]\) を\([\ce{H+}]\)に書き換えて完成です!
$$ K_a=\frac{[\ce{CH3COO-}] [\ce{H+}]}{[\ce{CH3COOH}]} $$
ここでも「$\ce{H3O+}$を$\ce{H+}$に書き換える」という考え方が使われています。
これを理解していない人が意外と多いので、お気を付けください!
今回は以上です。分からないことがあればコメントで質問してください。
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